黒のセドリック

猫派代表

2013年俺大賞

映画の部「横道世之介」(沖田修一
漫画の部「ヤンキー塾へ行く」(荒木光
音楽の部「ダーティーサイエンス」(RHYMESTER

総評。

横道世之介は「あいつは今頃どこでどうしてるだろう」とふと思う、あの感覚が全体に溢れている。人に対する郷愁というか。安易な「泣かせ」演出が無いのが良かった。「映画とは追体験である」と論じられる事があるけど、まさに誰かの人生を生きた気になる(というよりも、この作品の特徴でもあるんだけど、その人物と関わった気になる、と言ったほうが適切かなあ)。

ヤンキー塾へ行くはとにかくリアルかつ斬新。カッコ悪さとか人間関係の間合いや空気をここまで描けてるのって今まで無かったと思うよ。やっぱブサイクがいっぱい出てくる漫画はハズレが無いなあ(古谷実とか)。秀逸なのは、主人公の碇石っていうひょんなことから勉強に打ち込むヤンキーが、理不尽に絡んできたチンピラのボクサーに反撃するシーンの静と動の描き方。「碇石:ボクサーの腹を殴る→ボクサー:まともに食らう→碇石:指でチョイチョイ(カモーン)→碇石:「立て」→ボクサー:よろよろとなんとか立ち上がる→碇石:ボクサーの腹を殴る→繰り返し」の辺り。こんなの見たことない。

ダーティーサイエンスはRHYMESTERの中では間違いなく最高傑作。トラックがイリシットツボイ製だったと思うんだけど、「全ての音がかっこいい」。あとサンプリング多用してるから古い音楽っぽいのもいい。そして、二人のラップが「こなれ」てきた事による余裕からか、安定感に加えて遊びがある。


映画次点
クラウドアトラス」(ウォシャウスキー姉弟
「クロニクル」(ジョシュ・トランク

漫画次点
「メロポンだし!」(東村アキコ
「フリンジマン」(青木U平)

音楽次点
グーテンベルクの銀河系」(タルトタタン